“Nocturne”という名前でアルバムを出すにあたって、少しクラシックの紹介をしておきましょう。
Nocturne=ノクターンは日本語では「夜想曲」と呼ばれており、文字通り「夜に想う曲」です。
一般的には「夜が明けていく時に、その名残を想う」情緒を表現したものとされています。ショパンのピアノ曲が有名ですよね。
もともとフィールドが開拓したジャンルと言われ、ショパンの楽曲で世間に浸透し、様々な作曲家がNocturneを作ってきました。
それではさっそくノクターンを聴いていきましょう。
■ピアノ
ジョン・フィールド ノクターン4番
前述した通り、ノクターンを創出した人と言われています。
ショパンへの影響以上に、特にピアノ演奏で歌い上げるような奏法はロマン派全体のあり方に一石投じているとも言えます。
フレデリック・ショパン ノクターン2番
クラシックを知らなくても、この曲は良く知っているのではないでしょうか。
フィールドからさらにルバート(テンポの抑揚を奏者が自由につける)を強調することで、感情表現が生まれますね。
ロベルト・シューマン 4つの夜曲より
ロマン派の代表シューマンはノクターンという名で曲は残しませんでした。
しかし、夜というテーマとロマン派のアプローチは相性が良いのか、夜をテーマにした曲を数極残しています。
クララ・シューマン ノクターン2番
一方シューマンの妻クララはノクターンを作曲しています。
情熱的な作りで穏やかな夜、という感じではないですが…
ファニー・メンデルスゾーン ノクターン
女性繋がりでついでに紹介。メンデルスゾーンの妹ファニー・メンデルスゾーンもノクターンを作っています。
クララよりも歌い上げる美しい曲です。
夜のサロンでこの曲を弾いていたのでしょうか。
フランツ・リスト 愛の夢-3つのノクターン 第3番
ショパンと仲の良かったリストがノクターンを作るのは自然の流れかもしれません。
この曲もクラシックの枠を超えてよく知られていますね。
イケメン作曲家の甘いメロディのノクターン。反則です。
エドワルド・グリーグ 抒情小曲集 第5集-4
時は一世代下りますが、まだまだロマン派の影響が大きい時代。
グリーグお得意の、囁くような遠くから聴こえる様な響きはまさにノクターンです。
ガブリエル・フォーレ ノクターン13番
フォーレは13曲の夜想曲を作っており、ショパン並の夜想曲作家とも言えます。
ちなみに私がこの世の音楽の中で一番好きな曲。
冒頭の訥々とした進行を聴くだけで涙が出ます。
エリック・サティ 5つのノクターン
変な名前の曲が多いサティ。ややコケティッシュな雰囲気をもつものの至って普通?のノクターンも作ってます。
ノクターンの可能性を探っていたのでしょうか。
■管弦楽
ドビュッシー 夜想曲
ノクターンはピアノ曲だけではありません。
ドビュッシーはホイッスラーの絵に触発されて管弦楽でノクターンを作っています。
本来夜想曲は「夜に想うピアノ曲」だったのが時代を経て「夜を想う曲」になり、形式も自由化していると言えます。
現代に入ってもノクターンを作る作曲家は多いです。
夜想というテーマはそれだけ普遍的という事でしょうか。
ここではお気に入りのフィンジ作を挙げておきます。
■弦楽四重奏
ショスタコービッチ 弦楽四重奏15番 4楽章 ノクターン
さて、拙作ノクターンは弦楽四重奏なのですが、この編成の先達例はどうかというと、あまり多くありません。
ここで挙げる曲も、曲の1楽章を指しているだけで正式には夜想曲と言えないかも知れません。
ボロディン 弦楽四重奏2番 3楽章 ノクターン
そんな中で、ボロディン作の弦楽四重奏ノクターンは比較的ポピュラーです。
メロディを重視して切なくも美しい曲は日本人に受け入れやすいのではないでしょうか。
■その他
ジェルメーヌ・タイユフェール ノクターン
おまけでタイユフェールの夜想曲を。
聴いての通りオルガン曲です。
夜想とオルガンはミスマッチでは無いかと最初思いましたが、ストップ次第で雰囲気が出るものですね。
さて、つらつらと紹介してきた夜想曲。いかがだったでしょうか。
時代をまたいで作られてきたテーマとはいえ、節度や美しさ・儚さ・切なさを歌い上げるということは変わらないようです。
先駆的というより保守。ファッショナブルというより素朴。パーソナルな内面を表現する、自分と向き合う曲なのかもしれません。